9か月

[20] 2020年12月30日(水)

(11月19日〜12月18日)引き続き、(備忘もかねて)月ごとの記録を更新しておこう。この記録が、これほどつづくとは想像していなかった。「ひと月」(3月4日〜4月15日)、「ふた月」(4月16日〜5月15日)、「3か月」(5月16日〜6月19日)、「4か月」(6月20日〜7月18日)、「5か月」(7月19日〜8月18日)、「半年」(8月19日〜9月18日)、「7か月」(9月19日〜10月18日)、「8か月」(10月19〜11月18日)。そして、まもなく新年を迎えようとしている。*1

11月19日(木)
  • 大学院クラスのための(非公式)キャンパスツアー
  • モバイルメソッド(大学院AP, 90分, オンライン)
  • インプレッションマネジメント(180分, オンライン)
11月20日(金)
  • 未来創造塾(βヴィレッジ、Ηヴィレッジ)と国際学生寮に関する説明会(教職員向け)(60分, オンサイト)
  • 加藤研のウェブマガジン(第47号)発行。今期のテーマは「距離」

晩は、卒業生たちと会う。10年つづいている「ジブンジテン」の引き継ぎ+ヌイの送別会。

11月21日(土)

朝は「未来構想キャンプ 2020」の接続テスト(その2)。夕方には、卒業生(在フランス)の結婚式に参列(オンライン)。遠く離れていても、それなりに雰囲気は伝わってくる。その晩、こんなことを書いた。

🎉時差は8時間。10000キロくらい離れた場所で、卒業生が結婚式を挙げた。オンラインで参列。画面のなかの朝の光を浴びながら、ひとときを過ごす。最後に、手紙の朗読。幸せなときには、笑いも涙も止まらなくなる。和やかな空気が、ここまで流れてきた。

11月23日(月・祝)

「未来構想キャンプ 2020」の開催。10回目の今年はオンライン。朝から大学に行き、夕方まで高校生とのワークショップ。今年は若新さんと一緒に“「サボり」ワークショップ”を担当した。長かった、そして楽しかった!

参考:茶慕里高等学校 SABORI HIGH SCHOOL

11月24日(火)
  • 大学院生との面談(60分くらい, オンキャンパス)
  • 研究会(180分, オンキャンパス)
11月25日(水)

この日は水曜日(いつもは会議の連続)だけど、比較的軽め。

  • 打ち合わせ(60分くらい, オンライン)
  • 会議(120分, オンライン)
11月26日(木)

大学へ。夕方まではずっとオンラインで、そして(16:30〜19:40まで)教室で授業。

  • 会議の準備・打ち合わせ(120分, オンライン)
  • 大学院生との面談(60分, オンライン)
  • 修士研究会(90分くらい, オンライン)
  • インプレッションマネジメント(180分, 対面)
11月27日(金)
  • 会議(30分, オンライン)
  • 学生との面談①(60分, オンライン)
  • 学生との面談②(60分, オンライン)
  • 学生との面談③(60分, オンライン)
  • 会議(60分, オンライン)
  • 会議(90分, オンライン)
11月30日(月)
  • 会議(60分, オンライン)

慶應義塾大学SFC創設30年記念ロゴマークが決定。

f:id:who-me:20201231101316j:plain

SOURCE: https://www.sfc.keio.ac.jp/news/015085.html

慶應義塾大学SFC創設30年記念ロゴマーク決定のお知らせ | 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)

12月1日(火)

師走のはじまり。

  • 未来(おかしら日記)を公開。(未来構想キャンプのことを書いた)
  • 学生との面談(45分, 対面)
  • 研究会(180分, オンサイト)

f:id:who-me:20201201135333j:plain

12月2日(水)

そして、月に1度の朝から晩まで会議の日(すべてオンライン)。大学院の研究科委員会の議事進行(これは消耗する)。ここ数回は決められた時間を大幅にオーバーしていたが、きょうは、なんと予定よりも早く終わった。合同教員会議の冒頭30分は、塾長との対話。オンラインだと、離れた“キャンパス”にもお招きしやすいということか。たっぷりとお話しいただいた。

  • その1(60分, オンライン)
  • その2(150分くらい, オンライン)
  • その3(120分, オンライン, 議事進行)← きょうは早く終わった!
  • その4(120分, オンライン)
  • その5(120分, オンライン)
12月3日(木)

木曜日の「インプレッションマネジメント」は、基本的にはオンキャンパスでの開講。それを楽しみに大学に向かう。いやしかし、ここのところの感染者数の報告(東京都)は、気がかり。
12月3日の東京都の新規患者にかんする報告件数:532人 増えている。

  • 大学院生との面談(60分, オンライン)
  • 打ち合わせ(60分, オンサイト)
  • モバイルメソッド(大学院AP, 90分, オンライン)
  • インプレッションマネジメント(180分, 対面)
12月4日(金)
  • サボる(マンスリー)を公開。
  • 会議(60分, オンライン)
  • 経験の学(大学院AP, 180分, オンライン)

f:id:who-me:20201231150949p:plain

12月5日(土)

「津和野会議 2020」第2部 津和野&地域プログラムに参加(オンライン)。「コミュニティを考えるしくみをつくる:「墨東大学」プロジェクトの試み」というタイトルで事例紹介をおこなった。墨大のことを語るのはひさしぶり(でも、いろいろなアイデアの源になっていると思う)。じつは、昨年も津和野に行く機会があったが、ドタバタと日帰りすることになった。*ビデオは、昨年夏の「Tsuwano Campus - High School Program」のダイジェスト(Video: Kana Ohashi)。

12月6日(日)
  • 会議(30分, オンライン)
12月7日(月)

夏ごろに済ませるはずだったクルマの定期点検(半年くらい遅れて、ようやく)。じつは、秋学期になってからは電車をいちども使わずに通勤している。あのクルマで、120000km以上走っている。

  • 会議(60分, オンライン)
  • 会議(90分, オンライン)
  • 学生との面談(60分, オンライン)
12月8日(火)
  • 研究会(180分, 対面)
12月9日(水)

穏やかな?水曜日。こういう日もある。

  • 大学院生との面談(60分くらい, オンライン)
12月10日(木)
  • 修士研究会(90分くらい, オンライン)
  • インプレッションマネジメント(180分, 対面)
12月11日(金)

オンラインとオンサイト。いつ、どこに「いる」のがよいのか。移動のタイミングなど、ビミョーに面倒なことがある。

  • 会議(30分, オンライン)
  • 会議(60分, 対面)
  • 面談(60分, 対面)
  • 経験の学(大学院AP, 180分, オンライン)
12月14日(月)

キャンパスへ。テラス倶楽部は、引きつづき会食なしの近況報告。

  • 打ち合わせ(60分, オンライン)
  • テラス倶楽部(会食はなしでおしゃべり, 60分, 対面)
  • 会議(60分, オンライン)
  • 学生との面談(60分, オンライン)
12月15日(火)
  • 会議(60分, オンライン)
  • 研究会(180分, オンライン)

この日はかなり冷え込むという予報で(とにかく教室は寒い)、くわえて学生たちの身近なところにもCOVID-19が来ているようで、急遽、オンライン開講に切り替えた。「ぼく自身はキャンパスからつなぐので、教室/共同研究室で視聴することもできる」と連絡したが、予想どおり学生は一人も現れなかった。

f:id:who-me:20201215121410j:plain
12月15日|シュガー・ベイブを聴きながら、おべんとうを食べた。

12月16日(水)

会議と授業。

  • 会議(60分, オンライン)
  • 会議(120分, オンライン)
  • 会議(60分, オンライン)
  • 会議(90分, オンライン)
  • XDレビュー(大学院, 150分くらい, オンライン)
12月17日(木)

キャンパスへ。打ち合わせの類いは、やはり対面だとずいぶん楽だと、あらためて実感。オンラインでやるより、早く済む(もちろん、内容による)。インプレッションマネジメントは、早くも最終回。出席率は高かった。そして、「オンラインではできない」成果報告だったと思う。

  • 打ち合わせ(60分, 対面)
  • 打ち合わせ(30分, 対面)
  • モバイルメソッド(大学院AP, 90分, オンライン)
  • インプレッションマネジメント(180分, 対面)

12月17日の東京都の新規患者にかんする報告件数:821人。

12月18日(金) 
  • 会議(60分, オンライン)

 

(いまここ)

(つづく)

イラスト:https://chojugiga.com/

*1:必要に応じて、適宜加筆・修正します

キャンパスに戻って考えた

[19] 2020年12月29日(火)

19.1 秋学期が終わった

秋学期が終わった。COVID-19のせいで学事日程が大きく変わり、年内にすべての授業を終えることになった。ふだんなら年末年始の冬休みを挟むこともあって、秋学期は長く感じるものなのに、はじまってからはあっという間だった。
春学期との一番大きなちがいは、(いろいろな制約はあるものの)「オンキャンパス」での授業が可能になったことだ。春学期は、学生たちといちどもキャンパスで会うことなく夏休みを迎えた。だからなおさらのこと、対面の授業を楽しみにしていた。そして同時に、ちょっと心配だった。それは、9月の末に実施した「特別研究プロジェクト」の経験からくるものだ。夏休み中の施設利用にかんするガイドラインで、キャンパスでの開講は認められてはいたが、10人以内(10人程度)という決まりになっていた。受講生は20名近くいたので、結局のところ2つ教室を確保して、ぼくが部屋を行き来しながらすすめた。また、ようすを見ながら講義の一部はオンラインで実施した。
予想どおり、学生たちはキャンパスでの再会をよろこんでいた。半年くらいキャンパスに入ることができなかったのだから、あたりまえだ。なかには今年の春に入学して、初めて教室で授業を受けるという学生もいた。じっと窮屈な暮らしをしながら待っていたぶんだけ開放的になる。その気持ちが、お互いの距離を縮めようとする。笑い声がひびく。いちいちうるさいことを言うつもりもないし、友だちと対面で過ごすことにはしゃぐのもわかる。そんな学生たちのふるまいを見ていて、秋からキャンパスに戻ることが少し気がかりにもなった。

3月に書いた「授業はどうなる」では、オンライン=オフラインとオンキャンパス=オフキャンパスを区別しながら、開講形態のバリエーションについて考えていた。春学期を経て、学生も教員も「オンライン授業」に慣れていった。春学期の「グッドプラクティス」については整理され、学生・教員の所感もまとめられている*1。いまあらためて読み返すと、ずいぶん昔の話のようにも思えるが、この状況が長引いていることで、多少は余裕を持って向き合うことができているのだろう。無事に秋学期を終えることができたので、簡単にふり返っておきたい。

f:id:who-me:20200330234022p:plain

授業形態のバリエーション:3月30日「授業はどうなる」に載せた図。 https://kangaeru.iincho.life/entry/2020/03/30

 

(a) 完全オンライン|調査研究設計論(大学院)
学期前半は大学院の科目だったので「完全オンライン」にした。(秋学期がはじまる時点で)まだ入国できずにいる留学生のこと、調査研究の都合で拠点を移しているケースがあることなどをふまえて、全回オンラインですすめた。オンラインだったので、1・2限のふたコマ続き(9:25〜12:40, 休憩あり)で設定してもほとんど苦にならなかった。やはり、多くの学生や教員が春学期をふり返って口にしているとおり、移動の時間が節約されるのは大きい。とりわけ朝一番の授業の場合は、オンラインであることのありがたさを痛感する(ぼくたちの通うキャンパスが遠いということを、あらためて実感する)。
ぼく自身もオンラインの講義には慣れてきて、くわえて比較的少人数のクラスだったこともあって、毎回、(技術的なトラブルもなく)和やかな雰囲気で進行した。対面でなくても、回を重ねるごとに受講生たちの「顔」がわかるようになる。ひととおり講義が終わってから、(決してヒマではないのだが)ちいさなキャンパスツアーを企画した。聞いたところによると、秋学期から感染予防対策をしつつキャンパスを開いても、学生はあまり通ってきていないようだった(そもそも、「オンキャンパス」開講の科目がそれほどなかった)。せっかくなので、受講生に声をかけてみた。とくに大部分が留学生で、まともにガイダンスも実施できなかったので、いちど会っておきたいという気持ちもあった。
当日は、4名の学生がやって来た。オンラインで出会って、最後にオフライン(画面越しに関係が育まれ、やがて「オフ会」への想いが募るパターン)。滞在棟やメディアセンター、大学院棟など、1時間ほどかけて一緒にキャンパスを歩いた。それなりに、喜んでもらえたようだ。調べてみたら、そのころの日ごとの感染者数(東京都)は、だいたい500人程度。これを書いているいまは、900人を上回る日もあるので、わずか1か月ほど前は、ずいぶんちがう心持ちで過ごしていたのだと思う。

(b) オンキャンパス(+オンライン)|研究会(学部)
春学期の「研究会」は、なかなか調子がつかめないまま終わってしまった。その後、夏休み中に(秋以降の)キャンパス利用のガイドラインが整いつつあったので、秋学期の「研究会(ゼミ)」は基本的には「オンキャンパス」で開講することにした。これまでのようなフィールドワークや、宿泊を伴うような活動はまだまだ難しいが、やはり「研究会」は対面で顔を見ながらすすめたい。ウチのキャンパスは豊かな自然のなかにあるので、「外」を活用するのも悪くない。秋口の気持ちのいい季節なら、芝生に座ったり、建物の壁にプロジェクターで投影したり、教室を使わないやり方もありそうだ。結局のところ、秋を楽しみながら「外」で開講できたのはわずか数回だけで、ほどなく陽が落ちると冷え込むようになった。
とにかく教室は寒かった。換気のために窓を開け放ち、ファンを回しながらの授業になる。エアコンが稼働していても、容赦なく寒気が入り込む。机とイスには紙が貼られていて、間隔を空けて座るようにと促す。マスクや体温計、手指用の消毒スプレーなどが入った箱が常備されている。なんとも痛々しい表情の「教室」になっているが、もちろん、そんなことに文句をいうわけにもいかない。ファンのモーターの音は思っているよりも大きい。マイクを使っても、マスクをしたままだと思うようにやりとりできない感じだ。
「研究会」のメンバーの多くは、この状況になる前に出会い、すでに1年ほど(長ければ2年以上)のつき合いがあるので、コミュニケーションの間合いについてはそれなりに身体で理解している。ふだんなら、学期中に2回ほど実施している宿泊を伴う実習が、お互いを知るいい機会になるのだが、寒くて不自由な教室にいると、あたらしく加わったメンバーや、これまでさほど日常的にやりとりのなかった学生との距離感を調整するのは難しい。実習については、夏の「特別研究プロジェクト」から生まれた学生たちのアイデアが元になって、「非接触型」のフィールドワークを実施することができた。*2

(c) オンキャンパス(+オンライン)|インプレッションマネジメント(学部)
学期後半科目「インプレッションマネジメント」は「オンキャンパス」で開講すると決めていた。シラバスを記入する時点では、学期後半(つまり11月中旬以降)になれば状況が落ち着いているかもしれないという期待もあった。「第三波」を想定すれば、おそらくは学期前半こそが対面の授業に適していたかもしれない。いまふり返ると、年内に秋学期の講義をすべて終えるという学事日程の調整には慧眼を感じる。
この授業は、おおまかにいうと「コミュニケーション」の理論と実践を組み合わせたものだ。「自己開示」「印象」「役割演技」「らしさ」など、人と人とのかかわりについてどのように考え、自らのふるまいに結びつけるのか。簡単に「こたえ」の見つからない問いを、とにかく語り合うことを中心的な活動に据えた授業である。ここ数年は滞在棟を利用しながらすすめてきた。2016年春に滞在棟(滞在棟1)が竣工して、さっそく授業に宿泊を取り入れた。滞在棟の収容人数に合わせて受講者を選考することになり、結果としてはコンパクトなクラスになる。
滞在棟を使うときは、だいたい18:00ごろに集合して食事をつくり、みんなで大きなテーブルを囲んで食事をして、それからワークショップやグループワークをおこなう。日付が変わってからプレゼンテーションがはじまることもある。学生たちは活き活きとしているが、体力的にはなかなかハードだ。それでも、「コミュニケーション」が主題であればこそ、お互いに全人格的に向き合うところがいい。
そもそもが、こうした密度の濃い時間をつくる(つくるための)授業なので、宿泊はあきらめざるをえないとしても、やはり対面で開講したい。危険なことをするもりもないし、意地になっていたわけでもないが、とにかくこれは「オンラインではできない」授業だと考えていた。後述するように、数回はオンラインで開講することになったが、対面で50名規模の授業をおこなった。学期をとおして出席率は高く、他に「オンキャンパス」の講義が少なかったこともあってか、おおむね好評だった。

f:id:who-me:20201230112154p:plain

19.2 「教室」をつくる

いま紹介した以外にも、「修士研究会」「レビュー科目」「モバイルメソッド」「経験の学」といった大学院の科目はすべて「完全オンライン」で開講した。大学院生の進捗報告は、オンラインのほうが集中して聴くことができるのかもしれない。マスクをはずしてしゃべることができるので、ずいぶん楽だし、少しでも(マスクなしの)顔をお互いに見せ合うことができるのはいい。チャットで資料やリンクが共有されて、充実した時間を過ごしている実感もある。
よく指摘されるが、ターンテイキング(発話順序の交代)は、オンラインだとやはりぎこちなさが残る。そして、プレゼンテーションは(あらかじめ書かれた)発表用原稿を読むことが多くなりがちで、どうも平板な印象だ。手が届くほどの距離ではないにせよ人肌を感じ、マスクをしながらも息づかいが伝わってくるような、そんな「教室」がやはり恋しい。

とはいえ学生も教員も、心理的な安全が大切だ。ここ数週間は、報告される感染者数が増加している。原則として「オンキャンパス」開講のつもりだった「研究会」も「インプレッションマネジメント」も、数回は「オンライン」に変更した。たとえば祝日が授業日になっていた場合には、駅や電車などの混雑が気がかりになる。あるいは気温が下がりそうな日は、極寒の教室にいると風邪をひいてしまいそうで心配だった。学生と相談しながら、授業形態を決めることもあった。別途、時間割や開講形態のありようについては整理するつもりだが、その日の天気や体調などに応じて、柔軟に組み替えることのできる仕組みがあるとするならば、学生にも教職員にも歓迎されるはずだ。いうまでもなく、学生たちの通学経路や住まい方はじつに多様だ。状況の理解に無頓着な学生もいれば、精神的にかなりの負担を感じている学生もいる。
学生にかぎらず、ぼくたちの日常はハプニングの連続だ。慣れ親しんできたはずの時間割や開講形態などの「決まりごと」が、一人ひとりの必要に応えられるほどのしなやかさを持ち合わせていないことに、問題意識をあらたにする。この先、どのような「教室」をつくっていけばいいのだろう。9月の下旬に「キャンパスへ戻ろう」と決めて、いまは無事に学期を終えてひと息だが、大きな宿題をかかえた年越しになる。

カレンダーを見返してみると、結局、秋学期は週に3回ほどはキャンパスに通った。春学期は窮屈な思いで過ごしていたので、その反動かもしれない。秋色に染まるキャンパスは美しかった。毎年、秋になると東名高速の集中工事がおこなわれること、そしてタイミングによっては夜の上り方面が大渋滞することもすっかり忘れていた。渋滞は避けたいところだが、懐かしい出来事に遭遇したような気持ちさえして、「通勤時間」も大切であることを実感した。
数日前、4年生たちから「卒業プロジェクト」のドラフトを受け取った。ドラフトを受け取ってから忘年会へ(あるいは忘年会でドラフトを受け取る)という流れの、毎年恒例のちいさな「儀式」だ。今年は、「儀式」そのものは10分ほどで終わり、なんとも素っ気ない節目になった。陽が落ちる前に帰路につく。歩道橋の上から、白い月が見えた。

(つづく)

イラスト:https://chojugiga.com/

*1:SFC2020 春学期オンライン授業 https://www.sfc.keio.ac.jp/campuslife/online2020_spring/

*2:人びとの池上線(2020年10月)https://camp.yaboten.net/entry/epiil 人びとの世田谷線(2020年11月)https://camp.yaboten.net/entry/episl

サボる

2020年12月4日(金)

今年も、キャンパスの紅葉は美しかった。いまは、キャンパスに足をはこぶのが特別なことのように感じられるので(そもそも、そのこと自体が残念だけど)、なおさら秋の彩りを愛おしく眺めていたのかもしれない。葉が落ちて、いかにも冬という空気が漂いはじめた。そして師走である。10月に新学期がはじまってから、淡々と時間が流れている。研究会は基本はオンキャンパス、学期後半になってもう一つオンキャンパス開講の授業がはじまった。打ち合わせや会議なども、一部は対面で予定されるようになっている。それでも、なんだか平坦な毎日である。感染者数が増えているので、この先の施設利用など(そしてその先にある新年度のこと)が気がかりである。

11月の中旬には「人びとの世田谷線(Every Person in Setagaya Line)」というフィールドワークを実施した(https://camp.yaboten.net/entry/episl)。これは、10月におこなった「人びとの池上線」とほぼ同じやり方で、対象となる路線を変えたものだ。いつまでも身動きできずに過ごしているのにも飽きてきたし(悔しいし)、じゅうぶんに注意しながら、なるべく「外」へと向かうことにしている。そのために、あれこれと工夫が必要になる。2度の試みをとおして、オンラインとオンサイトを組み合わせたフィールドワーク実習のやり方がわかってきたように思う。とくにフィールドワークの当日は穏やかな陽気だったので、のんびりと「外」で過ごした。わずかな時間でも、実際に会って(今回は公園だった)お互いの成果を見せ合うような場面は大切だ。

この時期は、いつもなら「ORF(オープンリサーチフォーラム)」で慌ただしく過ごしている。実行委員(実行委員長)としてかかわることもふくめ、この10数年は、毎回展示やセッションに参加してきた。今年も開催予定ではあるが、時期も開催方法も変わるので、いつもの忙しさはない(そもそも、このタイミングで準備をするのはムリだった)。その代わりに、というわけでもないが11月23日に「未来構想キャンプ 2020」が開かれた。10年目、そして初のオンライン開催だった(全体のようすは、今週の「おかしら日記」に書いた https://www.sfc.keio.ac.jp/deans_diary/015087.html)。

ぼくは、若新さんとともに“「サボり」ワークショップ”を担当した。いろいろと準備をすすめながら、このワークショップのために茶慕里高等学校(https://fklab.net/sabori/)という架空の文脈を用意することにした。高校生たちは、そのなかで授業を受けながら「サボる」ことについて思案する。ぼくは、校長の役だ。「校長室」という名前のブレイクアウトルームで待っていると(当然のことながら背景画像も「校長室」)、何人かの高校生たちが、授業をサボって「校長室」に入ってきた。そこで、あれこれと話をした。サボって「中庭」や「屋上」に向かう生徒たちもいた。ぼくの頭のなかでは、くり返し『トランジスタ・ラジオ』が鳴っていた。

「サボり」がテーマなのだから、授業を抜け出すのがよいのか。それとも、真面目に授業を受け続けることこそが、ワークショップのねらいから逸脱する「サボり」になるのか。他の生徒たちのふるまいも、つねに見えるようになっている。ゆるやかに進行しつつも、ちょっとしたジレンマに直面しながら過ごす。
最後は、その体験をふり返りながら、「サボり」について語った。たとえば「授業を準備してくれている先生のことを考えるとサボるわけにはいかない」「実演の部分は面白かったけど、説明のところは(つまらないので)サボった」などというコメントがあった。架空の文脈での出来事だが、いずれも純粋で大切な指摘だ。人と向き合うときに謙虚であること。そして、留まるにせよ抜け出すにせよ、面白さが必要だということ。授業が面白ければ、生徒は留まる。「屋上」が魅力的なら、生徒は授業を抜け出す。茶慕里高等学校の「校長あいさつ」は、次のように結んだ。架空の設定だから、勝手なこと(でも言いたいこと)を書けるのだ。

慶應義塾大学SFCでは、キャンパス内にある“鴨池”を眺めながら、友だちと語らうことを「カモる」と呼んでいるそうです。茶慕里高等学校では、どこにいても、どんなときでも、空想の翼を羽ばたかせ、自由に広い世界を飛び回ることを「サボる」と呼んでいます。

そうです。私たちには、のびやかな想像力がある。だから、私たちの学びは止まらない、いや、止められないのです。
https://fklab.net/sabori/greetings.html

f:id:who-me:20201203113501j:plain(12月3日。ついに「NORTH」が姿を現した。)