2か月分

2022年12月4日(日)

あっという間に12月になってしまった。「マンスリー」と称して、月の初めに、前の月をふり返る短い文章を書いている。もともと秋はイベントが多いのだが、10月に秋学期がはじまってからは、かなり慌ただしかった。対面の機会が増えてきて、オンラインとの調整を難しく感じる場面も少なくない。ちょっとした「混乱」が起きている感じだ。
結局のところ、11月の「マンスリー」(つまり10月分)を書かないまま師走を迎えることになった。キャンパスが美しい紅葉の時季も、もう通り過ぎてしまった。なので、今回は10月・11月についてまとめて綴っておく(まぁ「合併号」のようなものだ)。

10月は、「芋煮会」に出かけることからはじまった。何年か前に山形に行き、河川敷で芋煮を食べたことで、すぐに「芋煮会」に魅せられた。外で調理して食べる心地よさは、カレーキャラバンでじゅうぶんに体験してきたことだが、なにより、多くの人が秋の訪れを合図に(ごく自然に)集うこと、そのためにさまざまな工夫があることなど、不思議な「ゆるさ」を感じられるところが魅力だ(数年前に、こんな記事を書いた → 「ゆるさ」があれば(7) - クローブ犬は考える)。多くのイベントが「3年ぶりの対面」での開催だ。いままで我慢していた分、みんな「リベンジ」に燃えているのだろうか。
朝、東京を発って山形には昼ごろに到着した。河川敷に行くと、すでに鍋が炊かれていた。数年ぶりに友人たちと再会し、芋煮を楽しんだ。岩手からも数名。文字どおり、雲ひとつない秋晴れで汗ばむくらいだった。ひさしぶりに会えて、うれしかった。「芋煮会」のためだけのちいさな旅行。もちろん(食べて帰るだけの)日帰りでもよかった。だが、ちょうど翌日はオンラインで参加できる(共同担当の)授業だったので、山形で一泊することにした。対面とオンラインの「混乱」はたしかにあるが、上手く組み合わせて段取りすれば、生活のスタイルも変わるはずだ。

秋学期の授業は、基本的には対面で開講している(大学院のプロジェクトはオンラインかハイブリッド)。一部の会議も対面で開かれるようになった。あらためてカレンダーを眺めてみたが、じつは、いままで以上にキャンパスに足をはこんでいるのかもしれない。自宅とキャンパスとの行き来には、それなりの時間も体力も必要なので、大学に泊まる(=残留する)ことも増えた。一時期は、(COVID−19の感染拡大予防のために)残留が許されていなかったので、ぼくにとっての「リベンジ」だといえなくもない。キャンパスが、少しずつ色づくようすを見ながら過ごしていた。

学生たちのフィールドワーク課題も、対象地をきちんと決めてすすめることになった。年度末に開いている展覧会(フィールドワーク展)の準備も動きはじめている。日常的にも、人と会う機会が増えて、展示を見に行ったり、まちを歩いたり、じぶん自身の移動が確実に増えてきている。クルマで遠出することも多くなった。これは、よろこばしいことだ。

11月からの(事務職員の)人事異動が発表された。これまでずっとお世話になってきたかたがたが、別のキャンパスに移ることになる。大きな組織だから当然のことだが、いきなりある日を境に変わってしまう。そして、11月1日になれば(当然のことながら)後任のかたがたが来て、キャンパスの日常が流れてゆく。それを考えると、教員というのは、およそ移動(異動)のない毎日なのだと実感する。いずれその日が来ることはわかっているが、移動することをきちんと意識できないと、研究室の書類やモノはどんどんと増えるいっぽうだ。

11月の下旬に予定しているフィールドワークの下見に、浜松まで出かけた。施設の利用や、市内をどのように動き回るかなどをふくめ、なるべく事前に確認することにしている。とりわけ慣れない土地に赴くときには、現地で誰かに助けてもらえると、いろいろなことが格段にやりやすくなる。幸い、加藤研の卒業生が浜松に暮らしている。連絡をとってみると、「コーディネーター」として協力してくれるという。頻繁に会っていても「3年ぶりの対面」になるわけだが、卒業生の場合は、それ以上のあいだ会う機会がなかったわけで、調査の下見をしつつも、なんだか懐かしい気分を味わうことができた。先ほどの人事異動の話にもつながる。毎週のように研究室で会っていながら、学生たちは卒業・修了とともに移動する。わかりきっていることだが、教員だけが移動せずに残るのだ。

オープンリサーチフォーラム(ORF)も例にもれず、「3年ぶりの対面」で、くわえて「20年ぶり」にキャンパスでの開催になった。2019年の秋に(リアルな)展示をして以来のことだったので、全体の段取りを考えたり、展示物をつくったりする過程ではちょっと「混乱」した。じぶんにかかる(であろう)負荷を、身体が忘れているような、そんな感覚だ。
展示のほうは「エンドー・スタディーズ」という主題で、藤沢市遠藤界隈のことをまとめた。ひとつは、いま建設中の学生寮のこと(厳密にいえば、ぼくの研究の成果ではないが、ここ数年、深くかかわっている)。あたらしくできる施設の紹介という面もあるが、キャンパスがどのように変わるのか、学習環境のありようをとらえなおすという点では、大切な現場に向き合っているのだと思う。
寮で暮らしている学生たちへのインタビューは、4月ごろから月に1回くらいのペースで続けている。『ドミトリ−・ライフ』というタイトルのブログ記事として公開しているが(→ https://dormitory.life/ )、これまでの記事を束ねて、少しだけ文章をくわえて冊子をつくった。これは、あたらしく完成する学生寮について考えるための素材になると考えている。さらに、春学期にすすめた「となりのエンドーくん」の成果も展示した(→ https://vanotica.net/endo_kun/ )。これも、キャンパスの界隈を知るためのフィールドワークである。
隣では、石川研が「リエンドウ」(これも、遠藤地区を対象とするプロジェクト)や「キャンパスタウン構想」の展示をおこなっていたので、一体感のある感じになってよかった。キャンパスで開催するなら、キャンパスに近いところをテーマにした展示がよいと考えていたので、それなりに上手く実現することができたと思う。予想以上に来場者で賑わったので、これもよかった。
卒業生向けの「SFCネクスト30募金 SFC卒業生限定 ファンドレイジング・イベント 秋のキャンパスツアー | 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)」(工事現場ツアー)も無事に終了。かなり激しく雨が降っていたので、なかなか大変だった。

ORFの開催に合わせて、卒業生たちがキャンパスにやって来た。あらためて、キャンパスでの開催は、卒業生たちにとっても意味があるのだと実感した。そして、カモ池のほとりで、数か月前のお祝いの会を開いてくれた。これは、うれしい。花束やプレゼントをもらって、記念撮影。しばし、当時のようすを思い浮かべた。考えてみれば、卒業して7〜8年も経てば、「現役」の大学生とはちょっとちがう世代感覚なのだろう。きっと「最近の新卒は…」などと、ぼやくこともあるはずだ。

ORFは無事に終わって、ほどなく浜松でのフィールドワークを実施した。昨年の今ごろは、宿泊を伴わない形で、つまり日帰り(通い)でプロジェクトを実施していた。今回は、9月末に実施した仙台でのプロジェクトと同様、1泊2日の実習だ。20人近くで宿泊型のプロジェクトを実施するのは、ずいぶんひさしぶりだ。いろいろと改善できる点はあると思うが、やはり現場は楽しい。ぼく自身の元気の素なのだと思う。今回も、ポスターづくりのワークショップのために、クルマに大判プリンターを積んで出かけた。ポータブル電源だけで動かせるので、クルマにプリンターを載せたまま、宿の駐車場で出力した。これは、なかなかいい感じ。
昼過ぎに成果報告会が無事に終了し、食事をしてから東京に向かった。距離にすると、だいたい250キロくらい。ただ、日曜日の午後の上りなので、渋滞が予想された(行きは、雨と工事の影響もあって4時間半くらいかかった)。しかも、コスタリカ戦は19:00キックオフである。なんとか家にたどり着いて、のんびり観戦しようと思っていたのだが、同じことを考えて帰路につくクルマがたくさんいるのだろうか。ある程度は覚悟していたものの、渋滞でノロノロ運転になった。テールランプを眺めながら数時間。けっきょく、家に着くまではラジオで試合のようすを聴いた。テレビでの観戦は、後半から。

そうこうしているうちに、11月が終わり、秋学期は後半を迎えた。ここ一週間ほどは、サッカーのワールドカップばかりが話題にのぼり、試合後の渋谷界隈は、(怖いくらいに)盛り上がっている。


写真は12月3日:カモたち