節目

2021年8月3日(火)

6月の末から、三田キャンパスでワクチン接種がはじまったので、ぼくも7月のはじめに予約を入れた。そのあと、いろいろな話を聞いているうちに、副反応が心配になってきた。やはり若者のほうが反応が出やすいようで、いかにも体力がありそうな、がたいがいい学生も、接種後に発熱して授業を休んでいた。ちょうど春学期最後の週をむかえて、じゅうぶんに気をつけながら、(一部の授業は)対面に戻そうというタイミングだ。対面であれオンラインであれ、ぼくの体調不良で休講になってしまうのは困る。補講も計画していたので、接種の予約をいちど取り消して、授業に影響がおよばない(はずの)日程で再予約した。
当日は、決められた時刻の少し前に到着した。列はできていたが、さほど混雑しているわけではない。みんな、整然と並んでいる。知り合いの事務職員が、列のようすをうかがっていたので、挨拶しつつ少し立ち話をした。職域接種のことが、いきなり(と言っていいようなスピード感で)決まり、準備や運営に駆り出されているのだろう。接種を受ける立場からすると本当にありがたいことだが、この大きなプロジェクトにかかわるのは大変だ。日常の業務は、ただでさえ学期末に向けて慌ただしいのに加えて、職域接種の現場で頭も身体も忙しく動かさなければならない(ありがとうございます)。さらに暑くなってくると、熱中症対策も必要になる。この先も、無事にすすむといい。
全体の流れは、(すでに口コミなどで聞いていたとおり)とてもスムースだった。列に並んで指示どおりにすすんでいくと、すぐに終わってしまった感じ。打つときに、痛みは感じなかった。ホールで15分休憩して、解放された。ちょうど火曜日だったので、「山食」に行ってひさしぶりにハヤシライスを食べた。ぼくが学生のころにも、週に一回はカレーが休みで、ハヤシライスの曜日があった。当時の「山食」は坂を下りて、いまの北館のあたり。
腕が少しダルい程度で、副反応はなかった。接種の翌日には、ふつうに運転してキャンパスに向かった。一週間後に影響が出るという話も聞いていたが、なんともなかった。やはり、だいぶ人(年齢?)によってちがうみたいだ。それよりも、2回目のほうが気がかりだ。先月末に足をケガして、しばし松葉杖が必要だったが、それも回復。ひとまず補講などを終えて授業のほうは一段落だ。

大学院の修士課程(来春修了予定者)の中間発表は、Gather.townで実施した。たびたび書いているが、今年に入ってから、研究室の成果発表の展覧会にも春学期の授業・研究会にも、Gather.townを活用している。もちろん、オンラインなので画面越しではあるものの、タイル状に顔が並んでいる画面を眺めるのではなく、じぶんで会場を移動しながら、誰かとすれ違ったり出くわしたりする感覚を味わうことができる。ぼくは、その感覚がとても大切だと思っている。おもちゃのようなアバターだが、じぶんが歩き回っているような、多少なりとも身体が画面のなかと接続されているような感じになる。
学会などでの利用実績はあるものの、修士課程の中間発表に「使える」かどうかわからない。いうまでもなく、中間発表は大学院生たちにとって大切な節目だ。立場上、(何かあったら)ぼくの責任になるわけだが、幸いなことに、ウチのキャンパスには「とにかく試してみよう」という気風がある。いくつかの会議を経て、Gather.townでの実施を決めて、あとは学事担当のみなさんとともに会場をつくった。アクセスすると、「PLAZA」と呼ばれる中庭に出る。左・上・右にある3つの会場に行くと、ポスターが並んでいる。当日は、なかなか賑やかで、和やかな雰囲気だった。なんとなく、ちょっと昔のビデオゲームのような設えで、修士課程の中間発表と呼ぶには、ずいぶんゆるい感じになってしまったかもしれない。それでも、学生と教員たちが会場を動き回り、ポスターの前でやりとりしているようすは微笑ましく思えた。概ね好評だったようで、一安心。もちろん、改善すべき点はいくつもある。工夫を重ねながら、学生と教員がいきいきと語らうことのできる場をつくりたいと思う。

7月の末には、未来創造塾(西側のΗヴィレッジ)の地鎮祭がおこなわれた。予定どおりに着工し、順調に行けば2023年の春から入居ということになる。キャンパスの敷地内に学生寮ができると、ずいぶんようすが変わる(じつは、4月にすでに国際学生寮がオープンしている)。COVID-19の影響を受けながら、否が応でも「キャンパスとは何か」について、考えさせられた。じつは、時間割や学事日程の窮屈さを抜け出すために、「キャンプ」や「カレーキャラバン」という試みを実践してきたのだが、いまは、逃れようとしてきた「キャンパス」に関心が向くようになった。学びのなかに生活があり、生活のなかに学びがある。ここ1年半ほど、定期的に会議に出席しながら、あれこれと考えていた。なにより、少しずつ建物が形になってゆくのを眺めるのが楽しみだ。

そして、土屋さんが8月1日から常任理事として本格的な仕事をはじめるということで、キャンパスの運営体制が様変わりする。前にちらっと見たときには、学部長室のデスクの上には未開封と思われる郵便物や書類が堆く積まれていたのだが、あいさつに行ったら、綺麗に片づいていた。引っ越し前の部屋は、スッキリしていて、それでいて切ない。
2年前の10月1日にスタートした「3役」での仕事は、結局のところ22か月で終わってしまった。そのうちの16か月半くらいは、大部分がオンラインでのコミュニケーションだった。学生とも、同僚とも、リアルな姿を見せ合いながら過ごした時間はごくわずかだった。

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写真は7月30日。西日が本館をかたどる。