衣替え

2020年6月1日(月)

学期がすすむにつれて、忙しくなってきた。もちろん、5週目あたりというのは、ふだんもこんな感じだが、オンラインの授業は準備に時間がかかる。授業や会議のほかに、学生との面談の予定を入れると、カレンダーの「余白」がなくなっていく。これまで移動に使っていた時間までもが侵食されるので、注意が必要だ。カレンダーには、(いままで「場所」が書かれていた代わりに)URLが記載されるようになって、それが「あたりまえ」になりつつある。ひとつ終わると、次へ。クリックして、会議室を出入りする。予想していた以上に規則的な毎日だ。
「自粛疲れ」というのは、たしかにあると思うが、おそらく学生も教員も「オンライン疲れ」が出ているはずだ。念のため、授業に先だって学生たちにその日のコンディションを確認することにしている。詳細は省くが、選択肢は「とても調子がいい」「調子はいい」「ふつう」「ちょっと疲れている」「体調が悪い」の5つだ。「とても調子がいい」「調子はいい」「ふつう」 を合わせると、だいたい6〜7割くらいだろうか。5月の中ごろになって、「ちょっと疲れている」が増えたようだ。これには、ぼくも同感。自室で過ごす時間が長いので、気をつけたい。もちろん、身体だけではなく心も。

5月14日、39県で緊急事態宣言が解除された。東京、神奈川をふくむ8つの都道府県については「まだ」という判断だったが、待ちきれなくなったのだろう。人が増えてきたようだ。
一度だけ、大学に置いてある本と資料を取りに行くために、キャンパスまで出かけた。およそ1か月半ぶり。運転するのも、ずいぶんひさしぶりだった(あたりまえだが、しばらくガソリンにお金を使うことがなかった)。高速は空いていて、ストレスなく大学へ。北門から入り、ゆるやかなカーブをすすむと視界がひろがって、校舎が見える。これまで、数え切れないほどくり返してきたはずなのに、もうそれだけで無性にうれしかった。シロツメクサも芝生も奔放だ。なるほど、ふだんはマメに整えられているのだと、あらためて思った。木々や草花は、ぼくたちの「自粛生活」のことなどおかまいなしに、上に向かって、光に向かって、伸びようとしている。
研究室は、ひっそりとしていた。賑やかな時間が恋しい。早くみんなに会いたい。

授業のほうは、もうすぐ「学期前半科目」が終わる。今年は回数が少なくなったこともあるが、ようやくオンラインの授業にも慣れてきたところで「節目」が来る。幸いなことに、これまでのところ、授業評価はおおむね好評だ。「学期後半も何かしらの形で関わりたい」といううれしいコメントもあった。オンラインの講義がどのような可能性をひらくのか。試してみなければわからないことが、まだたくさんある。

そして、もう6月である。衣替えのときだ。いつもなら、まちを歩くだけで感じられる。道ゆく人びとの装いに、季節の変化が表れる。新入生たちは、春に着るはずだった制服に袖を通すことなく、夏服で登校したのだろうか。
4月の中ごろ、オンライン会議や授業のために、背景用のバナー(書き割り)をつくった。ウェブカメラをとおして、雑然とした自室を晒すことになるので、背にする本棚を隠そうと思った。「STAY@HOME」の文字を印刷したバナーを提げて、2か月近く過ごしてきた。あたらしい月をむかえるにあたって、「STAY@HOME」の文字を消して、「Stay Safe」と「Stay Tuned」に変えた。まだまだ気を緩めてはいけないが、少しずつあたらしい段階に向かいたい。ささやかながら、背景も衣替えである。

引退から40年。山口百恵の楽曲が解禁になった(ストリーミングサービスで600曲近く)。さっそく、夜のまちを散歩しながら聴きなおしている。懐かしい「名曲」がたくさん。

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 写真は5月31日。夜の散歩。