「おそと」へ。

2021年12月11日(土)

月のはじめに書くことにしている「マンスリー」だが、もう10日を過ぎてしまった。これぞ師走ということか。あと3週間で1年が暮れる。11月も、あっという間だった。毎日報告される感染者数は、かなり減った。授業のほうは、(これを書いているいまのところは)対面で開講できている。キャンパスで学生や同僚たちと会う場面も、格段に増えた。ひさしぶりだからか、それとも気候のせいか、秋色の美しいキャンパスをいままで以上に長く味わうことができたような気がする。
11月はイベントも多くて、オンラインと対面が混在するようになって、移動の段取りや身体の使い方が気になりはじめた。以前は、さほど考えずにこなしていたことが、妙に面倒に感じられたり、体力的にキツく感じたり。「おうち」生活が、長かったせいだ。

11年目の「未来構想キャンプ」は、今年もオンライン開催となり、無事に終えることができた。今年も若新さんと一緒に“「サボり」ワークショップ”を担当した。昨年はZoomでの実施だったが、今年はGather.townを使うことができたので、かなり面白くなった。オンラインであればこそ、参加者は「もう一人の私」になることができる。ハンドルネームでアバターを纏い、ビデオはオフにしておく。もちろん、しゃべれば、声を手がかりに想像できることはたくさんあるが、茶慕里高等学校という架空の文脈で出会い、やりとりする。そのなかで「サボる」ことの意味や価値について考えてみた。(オンライン化の波によって)余白が容赦なく奪われ、よそ見をしたりぼーっとしたりすることができない教室は、とても居心地が悪い。そう思いながら「サボり」をテーマに全体を構成した。

ひさしぶりの出張もあった。およそ2年ぶりの空港。搭乗ゲートで座っているだけで、もう高揚感につつまれた。機内はほぼ満席だったのでちょっと緊張したが、わずか1時間ほどのフライトは新鮮だった。鶴岡のTTCK(先端生命科学研究所)は、2年ぶり。研究施設や企業を回って話を聞き、両学部長とあれこれ話した。「ORF2021」のビデオ収録もあった。地元の美味しいモノを食べて、温泉に浸かった。ほぼ、すべてがひさしぶり。翌朝の大学院セミナーは、鶴岡からつないで参加した。

学生たちとすすめてきた「キャンプ」も、限定的ながらも再開することができた。これまではずっと宿泊を伴うかたちで(典型的には2泊3日)すすめてきた。いまのところは日帰りで計画するしかないので、おのずと行動範囲は限定される。いろいろなご縁と幸運に助けられて、「風越キャンプ」が実現した。じつは、2年前の夏にカレーキャラバンで、風越学園の近くの農園に出かけたのだが(当時はまだ開園準備中)、今回は風越学園を起点に協力をお願いすることができた。
日帰りは可能だが、やっぱり大変ではある。昼食を食べて集合し、夕方まで取材をおこなって解散。あとは、翌日の正午までに、ペアごとにポスターを仕上げるという段取りだ。もちろん、これまでのように、そのまま宿に戻って作業をすすめることができれば、「キャンプ」の体験はずいぶんちがっていたはずだ。結局のところ、日帰りにすると、移動でエネルギーも時間も奪われる。ぼく自身も、朝早く(お昼を目指して)出発し、夕方には帰路についた。行きは渋滞もなくスムーズだったが、帰り(日曜の晩の上り)は渋滞していた。

ゆるいコミュニケーションラボ」(SFC研究所)のワークショップも、対面で実施した。一般から参加者を募るイベントだったので、いつも以上に緊張したが、面白かった。考えてみると、ずっと大学関係の世界ばかりを眺めていた。とくに、COVID-19対応の仕事に向き合っていた。どんなときでも、世の中は強かに逞しく動いているという、ごくあたりまえのことを再確認した。

外食の機会も少しずつ増えている。もちろん外食は、それはそれで愉しい。だが、食事については、この2年間でかなり規則的になっていて(これは、よいこと)、「おうち」のほうが健康的で身体に優しいことはまちがいない。同じ想いの人がそれなりにいるとするなら、やはり外食産業にとってはインパクトがあるのだと思う。

11月最後の日曜日は、ひさしぶりにカレーキャラバンの活動をおこなった。活動といっても、2年前のカレーキャラバン(上述の風越学園の近くで)以来、ずっと箱に詰めたままになっていた調理器財の整理と虫干しである。つまり、そろそろ活動を再開させようという準備だ。リーダーの亜維子さんと(リアルに)会うのはずいぶんひさしぶりのことだった。オンラインでさえ、この2年近くのあいだに2、3回会った程度だ。「平常運転」のころは、ピークなら毎週末というくらいのペースで会っていたので、ずいぶん「疎」になっていた。それでも、まもなく10周年を迎えるという活動なので、これまでに培われてきた感覚はすぐに戻ってきて、ブランクはそれほど感じなかった。
ずっと閉じられていた箱を開けると、止まっていた時計が動き出すような、そんな感じがした。スパイスとか調理器具の一部は廃棄して、新調することにした。「一緒に大きな鍋を囲んでカレーをつくり、みんなで分け合って、おしゃべりしながら食べる」というやり方は、もうしばらくはできそうもない。いろいろと話をして身体が温まったので、あたらしい年を迎えたら、そろそろ動き出そうと思う。

オオニシさんにお声がけいただいて、昭和女子大でもひとコマだけ講義を担当した。依頼されたときには、オンラインか対面かわからないという話だったが、希望どおり対面の授業が実現した。なにより、オオニシさんとひさしぶりに会って、(あまり時間はなかったが)話すことができたのがうれしい(研究室も見せてもらった)。やはり、教室での授業はいい。

「おうち」から「おそと」へ。冬の冷たい空気は、美味しい(と思う)。

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写真は12月2日:秋の彩りは見納め。