2021年9月3日(金)
7月の末から10日ほどは大学の一斉休暇で、その間事務室は閉室となる。諸々の会議もないし、事務連絡のメールも来ないので、ちょっとだけ解放感を味わった。とはいえ、この一斉休暇が明けると採点票の提出がある。一斉休暇ではあるものの、春学期をふり返りつつ学生たちの提出物を確認しながら過ごした。とくにこの1年半は家にいる時間が増えているので、「休暇」なのか「仕事」なのか、ますますわかりづらくなっている。しばらく猛暑の日が続いた。
一斉休暇が終わって、8月10日から事務室がふたたび動きはじめた。こちらは、ひと足先に休んでしまっているわけだが、こんどは世の中がお盆のシーズンを迎えてお休みモードになる。気づけば、オリンピックは終わっていた。この状況下での開催に、モヤモヤとした気分を拭うことはできなかった。それでも、どこかに出かける予定も立てられず、テレビをつければオリンピックの中継が流れているので、画面越しに観戦していた。
8月中旬には、2回目のワクチン接種を受けた。学生や同僚たちが、SNSに副反応のようすをアップしている。体温の変化や、症状など、細やかなレポートもある。解熱剤のこと、水分補給や睡眠、飲酒にいたるまで、いろいろな情報や体験談がタイムラインを流れてくる。個人差があるとは思いつつ、心配なので、金曜日に接種の予約を入れて、週末を空けておくことにした。
2度目の会場は動線が変更されていて、いくつもの部屋をぐるぐると歩いてから接種を受けるやり方になっていた。炎天下に並ばずにすむような配慮だろうか(これは、ありがたい)。よどみなく列は流れて、無事に終了。家に帰って、おとなしくしていた。幸いなことに、ほとんど反応はなかった。翌日の晩に少しだけ熱が上がったが、大したことにはならなかった。この10数年、風邪をひくことも熱が出ることもなかったので、少し心配していたのだが、拍子抜けする感じだ。若者たちのほうが副反応が出やすいことをネタに、(ぼくのまわりの)オジサンたちは副反応を期待しているかのようなやりとりをする。発熱するのは、若さの証だということか。その意味では、若さを実感することはできなかったが、相変わらず元気だ。
接種後の数日は、寝て過ごすだろうと想定していた。そのために予定を入れずに空けておいたのだ。そのつもりになっていたせいか、身体には何の影響もないのに、自己暗示にかかったように、ダラダラと過ごした。
今年の夏も、出かける予定を立てられないまま過ぎてゆく。大阪への出張も、あきらめた。ふとしたきっかけで、「Vanlife」「軽バン改造」といった動画をたくさん観るようになった。車中泊をしながら日本全国を巡るYouTuberたちの動きを追ったり、軽トラの荷台に家をつくるDIYのノウハウを調べたり。いうまでもなく、大学のプロジェクトでも「モバイル・メソッド」を主宰し、ふだんは「キャンプ」や「カレーキャラバン」という方法を試してきたのだ。近年のキャンプ(ソロキャンプ)ブームにも後押しされて、にわかにクルマのことを考えるようになった。
「ステイホーム」に耐えられなくなってきたのかもしれない。これまで、本当に移動の多い生活だった。いまは、幸いなことに、家にいながらできる仕事はたくさんあるし、おかげで自室も片づいた。このさいなので、古くなった家電もいくつか買い替えて、それなりに過ごしやすくなった。だが、やはりイスにしばりつけられているのはよくない。
9年前に「カレーキャラバン」をはじめたタイミングで、荷室の大きなクルマに買い替えた。食材や調理器具など、とにかくたくさん積んで出かけることを考えていた。スピードは出ないが、のんびりと遠くまで移動するのにちょうどいい。この夏、130000キロ走ったところで、車検を済ませた。
ずっと、荷物を積むことしか頭になかった。もともと商用車として使われているクルマだから、多少は乱暴に扱っても問題はない。後部座席を倒せば、とにかくたくさん荷物を載せることができる。いまさらという感じもするが、考えてみれば、荷室ではなくちょっとした部屋になる。そう思った。段ボール箱も押し入れも、狭くて小さな空間は、じぶんだけの「秘密基地」のようで、この想いは歳をとっても変わらないのだろう。本格的にやろうとすると、時間もエネルギーも(お金も)必要になる。とりあえず、荷室からリビングルーム(あるいは書斎)へと、少しずつ変えていくことにした。一人で狭い部屋に寝そべって、昔のレコードを聴いてみる。
もちろん、実用的にも悪くないように思う。クルマで移動するぶんには、人との接触は避けられるし、自然の豊かなところに出かければ気分も変わる。それほど遠くに行かなくても、自室のイスからは離れることができる。涼しくなったら、秋らしい背景(リアル背景)とともに「リモートワーク」を試してみよう。7月の中旬に発出された緊急事態宣言が延長され、8月はずっとこの宣言下で過ごした(さらに延長されるとの話も)。
写真は8月16日。改装中の部屋。