学期末

2021年2月18日(木)

「マンスリー」というカテゴリーで、月のはじまりに文章を書いている。今月はかなり遅れてしまって、すでに2月は半分以上が過ぎ去った。この学期末は、いつになく慌ただしかった。先延ばしにして、きちんと向き合っていなかった原稿(これは、すべてぼくのせい)、学期末の採点、「卒業プロジェクト」の評価、修士論文の審査などなど。新年をむかえてからの数週間は、やることがたくさんある。

おまけに、(すでに遠い昔のようにさえ思えるが)新年早々、1月7日には2回目となる「緊急事態宣言」が発出されたのだった。1都3県が対象だったものが、数日後にはさらに7府県が追加された。まちのようすは、あまり変わらないようにも見えたが、けっきょく、このおかげでキャンパスでの(対面の)授業はあきらめることになった。

秋学期は、変則的な学事日程で動いている。じつは12月ですべての講義は(正式には)終了していたのだが、研究会(ゼミ)については、そもそも回数が足りないし、なんとなくケジメをつけにくいこともあって、1月に2回の補講を予定していた。とりわけ研究会の最終日は、(じゅうぶんに注意しつつ)教室に集まりたいと思っていた。4年生が「卒業プロジェクト」をひとまず書き終えたことを労い、「節目」を迎えるつもりだった。
学期の最終回は、いつも全員が3分ずつしゃべる「全員プレゼンテーション」をおこなうことにしている。卒業するメンバーも、あるいは昨秋からあたらしく加わったばかりのメンバーも、研究会での活動をふり返る。とくに調査・研究に関係のないことでも、決められた3分のなかで自由に「何か」を語るというひとときだ。2年生のころから研究会で活動してきた4年生は、3年間をしみじみとふり返る。フィールドワークもまち歩きも、ちょっとした集まりも、すべてあたりまえのように身近にあった情景の多くが、この1年は画面のなかに行ってしまった。4年生がふり返りながら見せた思い出の写真が、切ない気持ちにさせる。「密」などということばを使うことなく、ただいつもどおり集まっていたのだ。

いま「節目」と書いたが、じつはそれは、もうひと頑張りしようとじぶんたちを鼓舞するための意味もあった。毎年、2月のはじめにちいさな展覧会を開いている。1月の中旬というのは、その準備がいよいよ本格的になるというタイミングなのだ。気の利いたたとえが思いつかないが、いわば「出初め式」のようなものだ(「決起集会」?)。ここからの3週間ほど、元気に一緒に展覧会をつくっていこう。その気持ちを確かめ合うような、そんな「節目」だ。

ぼくたちは、フィールドワークやインタビューといった方法を大切にしながら活動している。それを映して、4年生たちの「卒プロ」も、遠いまちに出かけたり、働きながら店を観察したり、あるいは場づくりを試みたり。つまりは、人と人とのコミュニケーションを起点に、実践的な活動をともなうテーマに向き合っている。だから、まちで見聞きしたモノ・コトからえられた知見は、大学のキャンパスのなかに閉じ込めるのではなく、もう一度まちに還すのがよいはずだ。そんな想いで、毎年、キャンパスの外にギャラリーを借りて「フィールドワーク展」を開くようになった。さらに言えば、ぼくが唯一の評価者である必要はないのだ。むしろ、複数の人の目に触れるように成果を外に向けて開くことが大切だ。場合によっては、行きずりの人に問いかけてみるのもいい。
2005年2月に最初の「フィールドワーク展」を開き、以来、毎年(場所を変えながら)成果報告のちいさな展覧会を開いている。17回目となる今年度は、2月最初の週末、みなとみらい(横浜市中区)にあるギャラリーを予約してあった。状況をうかがいつつ、予約制にして人数制限をしながら、なんとか対面で展覧会を開こうと準備をしていた。感染者数の日ごとの集計結果を見るたびに、ドキドキしながら、オンラインでの開催も頭の片隅にはあったが、この1年間窮屈な毎日を過ごしてきたのだから、最後くらいは対面で展覧会を開こうと思っていた。

だが、嫌なタイミングで緊急事態宣言が発出され、大学としての「活動指針」も書き換えられることになった。緊急事態宣言が発出されている間は、さすがに対面の開催は控えたほうがいい。準備や設営、撤収のことを考えると「密」になることは避けられないと思った。延期も検討したが、けっきょくのところは当初の予定どおりの日程で、オンラインでの開催を決めた。17年目にして、初めてのオンライン展覧会になった。
ぼく自身は、研究会の担当者として、この決断をする立場にいたわけだが、対面での開催を断念してかなり凹んだ。学生たちのほうは、わりと冷静に状況を見ていたのかもしれない。この1年間をとおして、たびたび残念な想いをして、悔しい感情を飲み込むようになっていたのかもしれない。

いつもより遅れてこの「月報」を書いているいま、すでに展覧会は終わり、一昨日、講評とふり返りの会を開いたところだ。今年度の展覧会については、別途紹介しようと思う。とにかく、学期末はあっという間に時間が過ぎてゆく。

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写真は2021年2月1日。朝の鴨池。