移動

2022年10月16日(日)

8月の「未来構想キャンプ」で片道18時間という旅をしたおかげか、移動の感覚がだいぶ戻ってきた。国内の旅行で片道18時間というのは、めったにないことだと思うが、そのくらい極端な体験を身体が欲していたのかもしれない。このひと月は、それなりに移動が増えた(増やした、のほうが正しいだろうか)。

9月の初めには日帰りで仙台へ。後述するように9月の末に学生たちと仙台でフィールドワークを実施することになったので、その打ち合わせと下見のためである。8月の船旅にくらべれば、新幹線の90分はあっという間だ。あいにくの雨だったが、協力をいただくみなさんに直接会って段取りを確認した。報告会で使うスペースなど、やはり実際にじぶんの目で見ると、具体的なイメージがわく。準備するべきモノ・コトにも気づく。(お決まりの)牛タンを食べて、ずんだ餅をお土産に買って、下見は終了。

大学院の学位授与式や入学式もあった。この時期は、わりと慌ただしい。学位授与式では、講義やプロジェクト科目でずっと2年間にわたってオンラインでやりとりしてきた学生に、対面で会うことができた。画面越しのコミュニケーションをとおして顔や声にはなじみがあるものの、学位授与式という最後のタイミングで、初めて(対面で)会うというのはなんとも不思議な感覚だった。

そして、9月末には「本番」となるフィールドワークを実施した。この2年半ほど、宿泊を伴う活動は制限されていたので、1泊2日とはいえ学生たちとともに「合宿」するのはずいぶんひさしぶりだ。学生たちにしてみれば、(入学以来)初めてのことだとしても不思議ではない。
10数年前から、全国のいろいろなまちで人びとに話を聞き、その人びとの「生きざま」をポスターにする活動を続けている。現地で成果をまとめるために、印刷する方法にいつも悩まされる。A3サイズくらいならコンビニでも出力できるが、A1になると面倒だ。8月にわざわざ船(フェリー)での移動をえらんだのも、クルマに大判プリンターを載せて行くためだった。もちろん、機材をはこぶことを理由にして、フェリーに乗りたかったということかもしれない。同じ理由で、今回は仙台までクルマで行くことにした。距離にすると、だいたい370kmくらい。COVID-19の影響を受ける前は、「カレーキャラバン」の活動で、遠出をしていた。東北地方にもたびたびクルマで向かったのを懐かしく思い出しながら運転した。
すでに別のところに書いたが、大判プリンターは車内に載せているポータブル電源で問題なく使うことができた。A1サイズを8枚印刷して、充電の容量はほとんど変わりがなかった。運転して向かえる範囲であれば、自前で「印刷所」をつくることができる。47都道府県を巡ろうという計画は、ここ数年休眠状態だった。今回、宮城県(仙台市)で実施することができたので、これでようやく東北地方は「コンプリート」となった。(残るは、1府6県である。)

仙台に行った翌週は山形へ。山形へもクルマで行ったことがあるが、今回は電車で。(たぶん)5年ぶりの芋煮会である。もう8年くらい前の出会いがきっかけになって続いているご縁だ。去年は、この季節に「芋煮セット」を贈っていただいて、「ステイホーム」で食べたのを思い出す。
これも、ようやく解禁。とにかく再会がうれしかった。きれいに晴れて、気温もずいぶん上がった。河川敷で鍋を炊いて、のんびりと芋煮をつくる。シメはカレーうどんになった。外で調理して、太陽を浴びながら食べる。ただそれだけで、気持ちがいいのだ。翌朝に予定はあったのだが、オンラインで済むので、その日は仙台に泊まることにした。「オンラインで済む」ならオンラインでよいのだろう。年に一度くらいは出かけて行って、友人たちと鍋を囲む。これは、オンラインでは済まない。

気づけば10月(も半ば)。「委員長」としての仕事は4年目!に入った。新学期をむかえて、キャンパスに足をはこぶ機会が格段に増え、慌ただしく2週間が過ぎた。やはり対面がいい。
相変わらず校務は減らず、体力も精神力も削られているが、学生寮(Ηヴィレッジ)にかんする仕事(だけ?)は楽しんでいる。いまは、ウェブなどに載せる文章を書いたり、あらためて「学生寮とは」について考えたりする時間が増えている。建物のほうは、かなりの存在感である。周回道路に面した部分の木々が伐採され、姿を見せた。見えているのは、食堂や多目的ホールがある「共用棟」で、この奥(つまりキャンパスの北側)に「居住棟」が並ぶ。

写真は2022年10月11日:共用棟が見えてきた。

30か月

[44] 2022年9月21日(水)

(8月21日〜9月19日)「未来構想キャンプ」でひさしぶりに遠出をして、その余韻に浸っていたら、ほどなく9月になった。秋学期からの「研究会」メンバーを決めるために、連日たくさん面談をした。9月末には「仙台キャンプ」を計画しているので、打ち合わせと下見で仙台へ(日帰り)。少しずつ、移動範囲が広がってきた。

8月21日(日)
8月22日(月)
  • 29か月」(コロナと大学)を公開
8月23日(火)
  • オープンキャンパス
  • 大学院生とのミーティング(60分, オンライン)
8月24日(水)
  • 会議(90分, オンライン)
  • 打ち合わせ(45分, オンライン)
  • 会議(120分, 議事進行, オンライン)
  • 会議(120分, オンライン)
8月25日(木)
  • テラス倶楽部(60分, 対面)
  • 大学院生との面談(60分, 対面)
  • 学生との面談(30分, オンライン)
  • 学生との面談(30分, オンライン)
  • 学生との面談(30分, オンライン)
8月26日(金)
  • 学生との面談(30分, オンライン)
  • 学生との面談(30分, オンライン)
8月29日(月)
  • 学生との面談(30分, オンライン)
  • ワークショップ(120分, 対面)
8月30日(火)
8月31日(水)

9月1日(木)
  • 学生との面談(30分, 対面)
  • 学生との面談(30分, 対面)
  • 学生との面談(30分, 対面)
  • 学生との面談(30分, 対面)
  • 学生との面談(30分, オンライン)
9月2日(金)
  • 学生との面談(30分, 対面)
  • 学生との面談(30分, オンライン)
  • 大学院生とのミーティング(100分くらい, 対面)
  • 会議(90分, オンライン)
  • 学生との面談(30分, オンライン)
  • 学生との面談(30分, 対面)
9月4日(日)
9月5日(月)
9月6日(火)
  • 大学院生との面談(60分, 対面)
  • 学生との面談(30分, 対面)
  • 学生との面談(30分, 対面)
  • 学生との面談(30分, オンライン)
  • 学生(湘南自治会)との懇談(90分くらい, 対面)
9月7日(水)
  • 会議(120分, オンライン)
  • 会議(30分, オンライン)
  • 学生との面談(60分, 対面)
  • 学生との面談(30分, オンライン)
9月8日(木

仙台へ。東北大学付属図書館で打ち合わせ

  • 「仙台キャンプ」打ち合わせ・下見(180分くらい, 対面)
9月9日(金
  • 会議(60分, オンライン)
  • 会議(30分, オンライン)
  • 大学院生との面談(45分, オンライン)
9月10日(木)
  • 学会(OS)での報告(180分, オンライン)
  • 学会(OS)のふり返りセッション(60分, オンライン)
9月12日(月)
  • 打ち合わせ(30分, オンライン)
  • 打ち合わせ(120分, 対面)
9月13日(火)
  • テラス倶楽部(60分, 対面)
  • 学生との面談(30分, オンライン)
  • 卒業生との面談(30分, オンライン)
  • 会議(45分, オンライン)
  • まるたか」(おかしら日記)を公開
9月14日(水)
  • 会議(60分, オンライン)
  • 会議(60分, オンライン) 
  • 面談(60分, 対面)
  • 会議(未来構想キャンプふり返り)(60分, 対面)
  • 会議(120分, オンライン)
9月15日(木)
  • 会議(90分, オンライン)
  • 会議(30分, オンライン)
  • 会議(90分, オンライン)
  • 学生との面談(30分, オンライン)
  • 学生との面談(45分くらい, オンライン)
9月16日(金)
  • 打ち合わせ(90分くらい, オンライン)

 

  • 9月19日の東京都の陽性者数にかんする報告件数:4,069

(いまここ)

  • ひと月」(2020年3月4日〜4月15日)
  • ふた月」(4月16日〜5月15日)
  • 3か月」(5月16日〜6月19日)
  • 4か月」(6月20日〜7月18日)
  • 5か月」(7月19日〜8月18日)
  • 半年」(8月19日〜9月18日)
  • 7か月」(9月19日〜10月18日)
  • 8か月」(10月19日〜11月18日)
  • 9か月」(11月19日〜12月18日)
  • 10か月」(12月19日〜2021年1月18日)
  • 11か月」(1月19日〜2月18日)
  • 12か月」(2月19日〜3月18日)
  • 2年目へ」(3月19日〜4月18日)
  • 14か月」(4月19日〜5月18日)
  • 15か月」(5月19日〜6月18日)
  • 16か月」(6月19日〜7月18日)
  • 17か月」(7月19日〜8月18日)
  • 18か月」(8月19日〜9月18日)
  • 19か月」(9月19日〜10月18日)
  • 20か月」(10月19日〜11月19日)
  • 21か月」(11月20日〜12月19日)
  • 22か月」(12月20日〜2022年1月19日)
  • 23か月」(1月20日〜2月19日)
  • 2年」(2月20日〜3月19日)
  • 25か月」(3月20日〜4月19日)
  • 26か月」(4月20日〜5月19日)
  • 27か月」(5月20日〜6月19日)
  • 28か月」(6月20日〜7月19日)
  • 29か月」(7月20日〜8月20日)

(つづく)

イラスト:https://chojugiga.com/

まるたか

2022年9月13日(火)

SOURCE: まるたか|政策・メディア研究科委員長 加藤 文俊 | 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)

突然のことだった。9月7日の夕刻、同僚の高汐さんから1枚のスクリーンショットが送られてきた。見れば、なじみのある店のページで、赤い文字で「閉業」と書かれている。学生が話題にしているとのことで、直接確認したわけではないようだ。ぼくは、ちょうど帰るところだったので、立ち寄ってみることにした。近くにいるのだから、自分の目で確かめるしかない。
水曜日は定休日ではない。誤報であることを願ってはいたが、看板の電気は点いていなかった。「本日休業」の札が提がっていて、脇にあるサッシの扉には貼り紙が見える。何が書いてあるのだろう。ロープが張られていたので、近づくことはあきらめた。駐車場のほうはがらんとしていて、自動販売機の灯りだけが浮き立つ。夜の7時くらいに「どうやら本当ですね」とメッセージを返し、現場のようすを写真に撮って添えた。

外観はログハウスなのに、中身は海鮮の店である。ちょっと不釣り合いな感じがするのは、前身が「ログイン」というレストランカフェだったからだ。「ログイン」は、(記録によると)SFC開校3年目(1992年)の秋にオープンした。いまでも、界隈にコンビニができるだけで大騒ぎするのだから、当時はかなり大きな「事件」だったにちがいない。
キャンパスのすぐそばにありながら、「学生街の喫茶店」になるのは容易ではなかったようだ。やがて「ログイン」は「まるたか」に姿を変えた。座敷の部分は、ログハウスに合わせて増築されたのだろう。キャンパスの近所で食事をするとなると、ほかに行く場所がない。だが、たんに近くて便利だったというわけでもない。水産会社が経営していることの強みで、ぼくたちは、味にもボリュームにも満たされた。学生や教職員のみならず、地元の常連たちにも愛される場所だった。週末になると、駐車場で警備員が誘導するほどに賑わう。「湘南」に遊びに来た人たちが立ち寄る穴場だったのかもしれない。

ぼくも、「まるたか」にはたびたび足をはこんだ。一番多かったのは、「研究会」のあとだと思う。ひと区切りして、何人かの学生とともに食事をしようという流れになる。同じようなタイミングで他の「研究会」も終わるので、ドアを開けるとテーブル席に知った顔を見かける。奥の座敷に行くと、たいてい同僚や学生のグループが食事をしていた。軽くことばを交わしたり、手をふったり。隣のテーブルから聞こえてくるウワサ話も気になる。何度も行ったはずなのに、スマホを探ると、「まるたか」で撮った写真は10数枚だけだった。結局、3年前の冬を最後に、もう行けなくなってしまった。

ぼくは、現場の写真をSNSにアップした。それほどフォロワーがいるわけでもなく、日々の戯れ言を気まぐれに載せているくらいだ。とくに「いいね!」やリツイートを期待していることもない。なのに、思いのほか反応があった。
知らない(思い出せない)学生、すっかりご無沙汰している卒業生、これまでに一度もコメントをもらったことがない(と思う)同僚も。予期せぬかたちで、みんなが相変わらず元気であることを知った。寂しげな「まるたか」の写真に、閉店を惜しむことばや「大泣き」の絵文字が並ぶ。これまでのぼくの書き込みで、一番盛り上がったのかもしれない。

この2年間、画面のなかに幾度となくつくられてきた「教室」は、「終了」のボタンを押すたびに消えてしまった。少しずつ対面で集う機会が増えてきて、秋学期からは、キャンパスで過ごす時間がさらに増えると思っていた矢先の「事件」だった。「ログイン」から、ちょうど30年。

たくさんの反応を見ながら、ぼくたちの思い出が、場所の記憶と分かちがたく結びついているということを、あらためて実感した。いうまでもなく、「まるたか」と聞いて思い出すのは味だけではない。きっと、誰かの顔が目に浮かぶはずだ。プレゼンテーションが上手くいかなかった日かもしれない。屈託のない笑い声につつまれていたこともある。教室での議論がまだ続いていた日もある。「まるたか」のテーブルを囲んで集まった情景が、いくつもよみがえってくる。

多くの卒業生たちが、鴨池を愛おしく語るのも同じだ。七夕祭で見上げた花火も、残留中に向かった真夜中のコンビニも、夕陽に浮かぶ富士山のシルエットも、すべてがリアルだ。いずれも、キャンパスに行かなければ、えることのできない体験なのだ。その一つひとつが、身体にしみ込んでいる。

朝夕は、ずいぶんしのぎやすくなった。あと数週間もすれば、あたらしい学期がはじまる。