マスク

2020年9月29日(火)*1

幸いなことに、ここ10年以上、風邪をひいたことがない。毎年、季節になると苦しんでいる人がいることを思うと申し訳ないが、花粉症もない。だから、マスクをする"日常"が訪れることなど想像もしていなかった。視覚的なことにかぎっていえば、マスクは顔の一部を覆い、自分らしさを消すアイテムだ。なにより、口元が隠されてしまうので、表情を知る手がかりが、とたんに乏しくなる。ベースボールキャップとサングラスが加われば、(おそらく目立つが)すぐに「怪しい人」になれる。
緊急事態宣言が出されたころは、なかなかマスクが手に入らなかった。すでに述べたとおり、ふだんからマスクをすることがなかったので、家にストックがあるわけでもない。結局、ネットで探して、不本意ながら高価なマスクを買った。慣れていないと、マスクとともに暮らすのは大変だ。運動不足解消のために続けていた散歩も、マスクをしたままだと、気温の高い日には苦しく感じるようになった。

そして、これは私たちの適応力の高さなのだと思うが、いまやマスクは"日常"になった。かつての「怪しい人」が、たくさん歩いているのだ。先ごろ、マスク専門店が開業したというニュースを見た。実際に外に出て見回すと、マスクは装いの一部として浸透しつつあることに気づく。品薄だったころとは、大ちがいである。機能はもちろん大事なのだが、色や柄、素材も、じつに多様だ。個人的には、黒いマスクはあまり好きではなかったが、その感覚も和らいできた。洋服や持ち物の色とマッチしているマスク姿の人を見かけると、怪しいというより「素敵な人」だと思うことさえあるのだから不思議だ。わずか半年で、私自身のマスク観が変わってしまったようだ。マスクは、自分らしさを消すのではなく、主張するメディアとして理解することもできるだろう。

マスクをする"日常"は、同調を求める圧力に充ちている。秋学期に向けて、少しずつキャンパスの利用を再開しようと準備をすすめているいま、感染拡大を防止するためにマスクの着用を求めることになる。キャンパスにかぎらず、公共交通機関やさまざまな施設を利用するとき、そして、まちを歩くときも、マスクをつけることがあたりまえになりつつある。
だが、うっかりマスクを忘れてしまうこともある。そんなときには、後ろめたさを感じたり、勝手に人びとの視線を冷たく受けとめたりする。いっぽう、マスクをつけていない姿を見たときの人びとの反応が、(いささか誇張されながらも)冷酷に映る場面もある。じつは、息が苦しくて、ちょっとマスクをはずしているだけかもしれない。肌が敏感で、マスクとの摩擦でどうしてもつけることができない場合もあるだろう。人それぞれの事情があることは、まちがいない。

学生や同僚たちに会う機会が、戻ってくる。およそ半年ぶりの再会を楽しみにしながら、マスクをする"日常"について、あれこれと考えを巡らせてみる。マスクをしているかどうかは、見ればすぐにわかる。そのわかりやすさのせいで、私たちの感性が鈍ってしまうことはないだろうか。マスクをしていない、その姿を見ただけで、感情的に反応してはいないだろうか。そんなとき、その背後にある事情を想像してみる。ちょっとしたゆとりを持つことが大切だ。
じつは、マスクにくらべると、はるかにわかりづらい状況がたくさんあることに、あらためて思いいたる。元気そうに見えて、じつは病気を患っている人もいる。視覚的な手がかりだけで、お互いの置かれている状況を知ることには限界があるのだ。親しい間柄であったとしても(というより、親しい間柄であればこそ)、わかり合えないこともある。
私たちは、社会生活を送るうえで、多少の窮屈は受け容れざるをえないことがある。だが、一人ひとりの考えも態度も多様で、全員がちがう。それでいて、みんなが孤立しているわけでもない。他者への想像力は、そうした複雑な日々のなかで、他者とのかかわり合いのなかで、培われていくものだ。

半年

[16] 2020年9月22日(火)

(8月19日〜9月18日)引き続き、(備忘もかねて)月ごとの記録を更新しておく。少しずつキャンパスに行く機会を増やしているものの、この窮屈な毎日は、「ひと月」(3月4日〜4月15日)、「ふた月」(4月16日〜5月15日)、「3か月」(5月16日〜6月19日)、「4か月」(6月20日〜7月18日)、「5か月」(7月19日〜8月18日)を経て、なんと半年に。そろそろ変化がほしい。*1

8月19日(水)

水曜日は会議の日。きょうは、すべてオンライン。

  • その1(60分)
  • その2(120分)
  • その3(60分)
  • その4(90分くらい)
8月20日(木)
8月21日(金)

オンライン・オープンキャンパス。スタートのところは、家で観ていた。学部長のあいさつは、暑くて大変そうだったけど、ああいう形でキャンパスからの“ライブ”があったのは、とてもよかったと思う。かなりの数の参加(アクセス)があったようだ。

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8月24日(火)

大学へ。学生との面談(オンライン)を終えて、大学院の会議の打ち合わせ。やはり、事務室に行って、対面で話をすると、いろいろとわかりやすい。脇田さんに会う。キャンパスで会うのは5か月ぶりくらいか。

8月25日(水)

本来であれば、パラリンピックの開会式

  • 学生との面談(45分×2)
  • 晩は、NHKのBS1『地球リアル』で「バーチャル七夕祭」の特集。全体をとおして、“青春”を感じさせる構成になっていた。フィーナーレの花火のために、実行委員たちが(ごく一部を除いて)ログアウトしていたという話ははじめて聞いた(感動)。じつは、ぼくもこの番組制作にさいして、オンライン講義のことやネットワークコミュニケーションについて、何度か取材を受けていたのだが、その部分はすべてカットされていた(まぁよくあること -- 前にもあったことだけど)。

8月26日(木)

会議は午後からだったが、議事進行はやはり疲れる。前回(7月末)よりは、いろいろ上手くいったと思うが、30分ほど時間オーバー。

  • 研究科委員会(議事進行, 120分くらい)
8月28日(金)

大学へ。月末の金曜日だったせいか、高速道路は渋滞。でも、その体験そのものがひさしぶりだったので、あまり気にならなかった。19:00ごろには帰宅。なんとなく、いまごろになってちょっと夏休み気分になる。
安部首相が辞任を発表

8月31日(月)

8月31日から、キャンパスへの入構方法が変わった。あらたに入構ゲートがつくられて、検温と入構記録。クルマは、いちど本館脇に停めてから入構ゲートに行くことになる。

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9月1日(火)

週末は、ちょっとだけのんびり過ごした。そして、気づけばもう9月。夕方から会議。4日に発出予定のBCPについて。こういう文書は、なかなか難しい。SFCは、レベル2への引き下げに向かう。

  • 会議(80分くらい)
9月2日(水)

大学へ。暑い日が続いている。きょうは会議がたくさん(月に1、2回はこういう日がある)。なぜだか、大学のほうが通信環境が悪くて(WiFiが不安定)、ときどき落ちてしまった。これ、有線でつないだほうがよさそうだけど、しばらくぶりなので、まずはLANケーブル用のアダプターを買う必要あり。

9月4日(金)
9月5日(土)
  • 残暑(マンスリー)を公開
9月7日(月)

大学へ。きょうから金曜日まで、新入生向けの「キャンパスツアー」がはじまる。非公式ではあるが、教員有志によって企画され(もともとは5月ごろに発案があった)、実現した。とにかく暑い!9月7日の東京都の新規患者にかんする報告件数:77人

  • オンラインおしゃべり(テラス倶楽部)(60分くらい)
9月8日(火)

「研究会」の4年生たちと、およそ半年ぶりのミーティング(対面)。近所の会議室を借りて、「卒プロ」の進捗や展覧会のことについて話す。やはり、近くで顔を見ながら話すのはいい。帰りに「じゃあビールでも一杯」というのは、もちろん堪えた。

9月9日(水)
  • 新入生のための「キャンパスツアー」。ぼくは、10:30〜11:30の回を担当。1時間半ほどかけて、7名の新入生を案内した。βヴィレッジは、なかなかいい感じ。みんな、とても喜んでいた。
  • 9月に入学する新入生向けのメッセージビデオは、“自撮り”することに決めた。なかなか、上手くいかず。もう一度、金曜日に撮り直すことに。

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9月11日(金)
  • 午前中は三田キャンパスで会議(対面, 90分くらい)
  • SFCに向かい、午後は新入生向けのメッセージビデオの収録。「カメラを止めるな」的な、長回しで撮っているので、何度もやり直し。難しい…。
  • 学生との面談(60分くらい)
9月14日(月)

SFCへ。けっきょく、もう一度だけメッセージビデオを撮ることに。通算で、テイク50くらい。もうこれ以上はムリっぽいので、いちおう終わりにする。

  • オンラインで学生と面談(60分くらい)
9月15日(火)
  • 三田で(60分くらい)
  • オンライン面談(20分×3)

f:id:who-me:20210526071909p:plain戻りましょう(注意しながら少しずつ🤏) #returntolifeoncampus

9月16日(水)

そしてまた、会議の日。きょうは、すべてオンライン。

  • その1(60分)
  • その2(120分)
  • その3(120分)
  • その4(60分)
9月17日(木)

夏季「特別研究プロジェクト」のはじまり。オンキャンパスでの開講が実現した。18名の参加者を2つの部屋に分けて。「距離(2メートル)」について考えてみる実習。

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9月18日(火)

卒業式/学位授与式は、ビデオ配信となった。加藤研の9月卒業/修了生がキャンパスに来るというので、4月に博士号を取得した石川さんも一緒に、ちいさな授与式。賞状の授与をおこない、花+アマビエ饅頭をプレゼント。そのあとは福澤諭吉像の前で記念撮影(という定番コース)。SFCの広報のページにも載った。4連休のはじまり。9月7日の東京都の新規患者にかんする報告件数:220人

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【2020年9月18日(金)|卒業式/学位授与式】写真は総務の加賀谷さん撮影 

(いまここ)

(つづく)

イラスト:https://chojugiga.com/

*1:必要に応じて、適宜加筆・修正します